ニューエイジ運動の発生、そして大衆化へ

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    フィフス・ディメンションズによる”アクエリアス”まさに「みずがめ座の時代の到来」

     

    1967年サマー・オブ・ラヴの季節が終焉へと向かうなか、中心地点であったヘイト・アシュベリーがバビロンと化したことに見切りをつけ、オリジナル・ヒッピーたちがサンフランシスコの北部マリンカウンティーで形成したとされるニューエイジ運動。

     

    しかしこのニューエイジなる言葉の起源を辿ると1922年神智学協会マダム・ブラバッツキー後継者であるアリス・ベイリーがニューヨークに設立したフリーメイソン系出版社「ルシファー出版社(すぐにルシス・トラストと改名される)」が公に用いたのが人類史上「初」とされており、さらにカトリック中央協議会の見解によると薔薇十字団とフリーメイソンによってフランス革命時、そしてアメリカ独立戦争時に密かに使用されていたものだという。

     

    その歴史的真相こそは定かではないが、ともあれニューエイジ運動の根幹はブラヴァッツキーが説いた「霊性進化論=人間の生きる目的は、輪廻転生を通してより高度な霊的進化を果たすことにある」にあると言ってよいだろう。

     

    思想背景としてはヨハネ黙示録20章4節から7節にある千年思想の影響が強く、1000年続いた神と悪魔の戦いが20世紀末に終結し、ニューエイジ(新しい時代)が到来することに由来。当時のニューエイジャーたちは この話を西洋占星術的にとらえ、キリストに始まる二千年期であった「うお座の時代」が終焉し、「みずがめ座の時代」の到来と解釈(当時大ヒットしたミュージカル"ヘアー"劇中のフィフス・ディメンションによる"アクエリアス"は象徴的)。ちなみに神智学協会ブラヴァッツキーも20世紀到来と共にアクエリアスの時代が到来すると説いていたことは偶然ではないだろう。


    これにより既存の西洋物質文明やキリスト教支配の時代も同時に終焉したのだから「もはや古くて約立たなくなった宗教的教義や道徳なんか捨て去り、新しい真理を皆で追及しようじゃないか!」という流れに発展していく。これには時のローマ法王も「ニューエイジはグノーシス主義」と批判したが汎神論者であるニューエイジャーには届かなかった。

     

    またこれらスピリチュアルな流れのほかに、アブラハム・マズロー(注1)による人間性回復運動(ヒューマンポテンシャル・ムーブメント)や、そのマズローのバックアップを受けて発展したカルフォルニアのエサレン研究所(注2)といった心理学の流れ、またアラン・ワッツ(注3)やマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(注4)などの東洋思想、ニューソート思想(注5)、フリッチョ・カプラ”タオ自然学”(注6)に代表されるニュー・サイエンス、さらにはニュー・パラダイムやディープ・エコロジー、フェミニズム、ホリスティック医療、レイキ、ネオ・ペイガニズム、UFO信仰・・・・・など、ありとあらゆる運動体が複雑かつ緩やかにからみあい、女優シャーリー・マクレーン(注7)や歌手ジョン・デンバー(注8)といった超有名人らも飲み込んでニューエイジ運動を形成していき、1987年にその先鋭的要素はマヤ歴研究者ホゼ・アグエイアスが唱えたムーブメント「ハーモニック・コンバージェンス」により頂点を迎えることとなるのだった。

     

    「ハーモニック・コンバージェンス」とは、1519年スペイン人コルテスによって滅ぼされたマヤ文明の、468年続くといわれた「九つの地獄」を終了させるため 、1987年8月16日と17日に世界の聖地に14万4000人以上の人々の動員を呼びかけるイベントだ。結果、当日はマヤのピラミッドや米国のシャスタ山、エジプトのピラミッドなどに世界から目標人員以上のニューエイジャーが集結する。この成功により世界は救済され、アグエイアスにより2012年12月の地球のアセンション(次元上昇)が宣言されたという。


    しかしアグエイアスによるこのイベントの真の目的はマヤ文明のみならず、スーフィズムや仏教、先住民文化、ネオペイガニズム、ニューエイジストなどオルタナティヴな精神性をフォローアップし、既存の宗教を超えたメタな意識革命を世界に発信すること、「ハーモニッツク・コンバージェンス」はこの意識革命の方便だったという説もある。

     

    ともあれこの「ハーモニック・コンバージェンス」を境にニューエイジ運動はカウンター色を薄め、資本主義社会との調和や一般大衆化へ時代的流れとともにシフトしていくこととなる。

     

    (注1)アブラハム・マズロー1908-1970

    米国心理学者。人間の自己実現や心の健康についての心理学を提唱。「精神分析」「行動主義心理学」につぐ第三の心理学である人間性心理学の生みの親。1969年スタニスラス・グロスとともに設立したトランスパーソナル心理学など、その影響力は心理学のみならず経営学や看護学にまで及んだ。

    (注2)エサレン研究所

    カルフォルニアのビッグ・サーにて1962年マイケル・マーフィーとリチャード・プライスによって設立されたセラピー保養施設。人間性回復運動の震源地として有名。

    (注3)アラン・ワッツ1915-1973

    英国哲学者。23歳の時に米国に渡り禅や東洋哲学を広める。ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ゲイリー・スナイダーなどビート・ジェネレーションに多大な影響を与えた。

    (注4)マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー1918-2008

    ビートルズもハマったヒンドゥー教系のニューエイジ思想家。超越瞑想(トランセンデンタル・メディテーション)で有名。現代文明は物質面と精神面が不調和であり、超越瞑想を実践することで完全なる調和を回復し、物質面でも精神面でも両方の幸福を得ることができると唱えた。クリシュナムルティー、グルジェフと共にニューエイジ界の三大グルと呼ばれた。

    (注5)ニューソート思想

    19世紀米国にてクリスチャン・サイエンス創始者メリー・ベイカー・エディや催眠治療家フィニアス・クインビーなどによって提唱された思想。聖書の読み解き方を従来のプロテスタント的な解釈から切り離し、「原罪など存在しない」「われわれひとりひとりがキリストの力と繋がっている」といったアンチ禁欲的思想を打ち出す。「心の持ちようで現実の健康や経済状況は変化する」教えは現在の自己啓発のルーツともなった。生長の家の谷口雅春は光明思想として日本にいち早くニューソートを導入している。

    (注6)フリッチョ・カプラ”タオ自然学”1939-

    オーストリア出身の米国物理学者カプラによる1975年著作。現代物理学と東洋思想の類似点を指摘し、ニューエイジ運動の流れに乗って世界的ベストセラーを記録した。

    (注7)シャーリー・マクレーン1934-

    映画「愛と追憶の日々」でアカデミー主演女優賞を獲得したハリウッド女優。エドガー・ケイシーに傾倒し、ニューエイジ運動にコミット。自らの対外離脱体験や神秘体験を綴った著書”アウト・オン・ア・リム”は1983年刊行され世界的ベストセラーになり、1987年にはそのテレビドラマ化も大ヒット。ニューエイジ運動のお茶の間化に多大なる影響を及ぼした。

    (注8)ジョン・デンバー1943-1997

    米国人気フォークシンガーとしておなじみのデンバーは1971年デンバー山でのキャンプで異星人の精霊と霊的合体を果たしたことでニューエイジ運動に開眼。1976年にはコロラド州スノーマス近郊にニューエイジ・コミューンまで設立。可動式ピラミッド瞑想ルームまで建設し瞑想と(得意の)合気道に明け暮れながら米国大統領立候補を目指すも、1997年自家用飛行機の事故で地球を去ってしまった。


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