2016/05/30 (月)
19:00〜21:00 FRINGE CULTURE 第二夜?「オメガポイント」〜関東大都市圏のエアポケットに潜むエソテリック・ミュージック?LIVE:オメガポイント 司会:宇田川岳夫 出演:斉藤数馬 ?ゲスト:持田保(Industrial Music for Industrial People著者)
DOMMUNE出演に向けて予習がてら、ヒッピー文化やカウンターカルチャーがらみの話をまとめてみました(仕事中に)。
当日はこれらの歴史的背景を前提とした日本のカウンターカルチャー秘史が宇田川岳夫さんやオメガポイント斉藤さんから語られると思います。非常に楽しみ過ぎです!
「サマー・オブ・ラブからサマー・オブ・デス、そしてセカンド・サマー・オブ・ラブへ」
ビート詩人グレゴリー・コーソが「50年代にビート・ジェネレーションが文学で描いたことをヒッピーは現実にした」再三語ったように、ヒッピーの起源をたどればジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグといったビート世代に行き着く。
ヒッピーはそんなビート世代より一回り若い世代のボヘミアンを指した名称であり、1960年代中頃より発生した。
もともとはニューヨークのイースト・ビレッジがヒッピー発祥の地とされるが、その後サンフランシスコに集中しヘイト・アシュベリーを拠点にコミューンを形成。
1963年ケネディ大統領暗殺事件、ベトナム戦争泥沼化などを背 景に反戦運動や公民権運動が加熱するなか、1967年1月14日作家アラン・コーエンの呼びかけでサンフランシスコのゴールデンゲートパークにてヒューマン・ビーインが開催。
アレン・ギンズバーグ、ゲイリー・スナイダーやティモシー・リアリーなど参加。リアリーによる「ターン・オン、チューン・イン、ドロップ・アウト」宣言もこの時行われる。グレイトフル・デッド、ジェファーソン・エアプレイン、ビッグブラザー・ホールディング・カンパニーなどの無料コンサートも盛り上がり、フラワー・ムーブメントの本格的幕開けとなった。
ビーイン運動はマスコミにも大々的に取り上げられ各地に伝染する一方、ヘイト・アシュベリーはヒッピーに憧れる人々の聖地とみなされる。
ピーク に達したのが1967年夏。伝説のサマー・オブ・ラブ。
マリファナやLSD、ヒッピー、反戦運動、フリー・セックス、グレイトフル・デッドなどのサイケデリック・ロック、そしてヘルズ・エンジェルス、ブラック・パンサー、マンソン・ファミリーなどを巻き込みカウンター・カルチャーの概念を生み出したこのサマー・オブ・ラブ。
アシッドによる変性意識の影響で「今すぐにでも世界革命がおこりうる、世界は変わるっっっ!!!」と多くのフラワー・チルドレンたちは信じていた。
しかしその確信はヘイト・アシュベリーのコミューンでは浄化できないほど大量(4万〜10万人)の若者流入、それに伴う治安悪化(伝説のLSDディーラーが立て続けに惨殺された!)、大量生産LSDの粗悪化、(政 府による陰謀説もある)変わってハード・ドラッグ、なかでも深刻だったのがヘロインの蔓延、それを口実とする警察の介入によりわずか3年ほどで衰退してしまう。
そんなサマー・オブ・ラブの残骸は米国では70年代に入り、ニューエイジ運動へとリンクしていく
http://tmochida.jugem.jp/?eid=59
一方で海を渡りイギリスへと持ち込まれたサマー・オブ・ラブのテイストはロンドンのサイケデリック・クラヴ”UFO”やそこで出演したピンク・フロイドなどに継承されていった。
その後のピンク・フロイドの軌跡からもわかるように、英国サイケデリック運動はすぐにプログレッシヴ・ロックやスペースロックへと回収されていくなか、アシッド&フリークアウト精神は地下へと潜伏し、スロッビング・グリッスル一派へと流れつく(彼らはピンク・フロイドのファンだった)。
脱コントロールというバロウズの概念を基に、ドラッグ行動主義である彼らインダストリアル一派はTOPYやIOTといった秘密結社を結成。1983年をピークにケ イオス・マジックを通じてサマー・オブ・ラブの暗黒面を拡大トリップさせたサマー・オブ・デス運動を開花させていく。
http://tmochida.jugem.jp/?month=201412
サマー・オブ・デスの中心人物のひとり、ジェネシス・P・オーリッジ(TG、サイキックTV、TOPY)は87年シカゴに渡りアシッド・ハウスと遭遇。同年帰国後イギリス初のアシッド・ハウス作品”Tune In Turn On The Acid House”を発表。
この1987年というのが重要で、イギリスではイビザ島経由でクラブ・シーンにMDMAが流入。MDMAはハウス・ミュージックと革命的化学反応をおこしセカンド・サマー・オブ・ラブ・ムーブメントを引き起こします。
そしてサマー・オブ・ラブから派生したもうひとつの運動、ニューエイジも1987年ホゼ・アグエイアスによるハーモニック・コンバージェンスによりピークを迎えていました。
「MDMAとセカンド・サマー・オブ・ラブ」
1912年ドイツ「メルク社」によって開発されながらも製品化されることのなかったMDMAは1950年代アメリカ陸軍の研究を経た後、1960年代に入りアメリカ化学メーカー「ダウ・ケミカル」所属の薬理学者/化学者アレキサンダー・シュルギンによってその効能が発見されます。
MDMAがもたらすとされる「多幸間」「脱不安感」「共時性」「肉体的運動欲求」などの作用は、シュルギン博士を経由して多くの心理学者やサイコセラピストが注目、臨床実験に使用されました。
その一方、MDMAの「効き」にめざとく飛びついたドラッグ愛好家(ダメ。ゼッタイ)も使用。これが世間様から問題視され1985年「ニューズウイーク」誌でのMDMA特集記事をきっかけにバッシングが拡大。同年すばやくアメリカ連邦麻薬取締局DEA、そしてインターポールICPOからイリーガル認定を受けてしまいます。(日本では1990年にイリーガル認定)
とはいえ米アンダーグラウンドでは他のドラッグ同様に闇で流通していたMDMAは、その後ヒッピーたちやバグワン・シュリ・ラジニーシ信徒サニヤシン(瞑想に使用していたとの噂)などの手により欧州へと広まっていきました。
1987年になるとヒッピーの聖地であるインドのゴア、タイのパンガン、スペインのイビザなどで開催されていたアシッド・パーティーにMDMAが爆発的に広がります。
これによりロック・ミュージックをバックにLSDをキメていたアシッド・パーティーは、一気にハウスやテクノのデジタル・ビートで踊るレイヴへと変容を遂げました。
神経化学的メカニズムは不明ですが、胎児の心拍数である120BPMの電子信号とMDMAの相互作用は、これまでのダンス・カルチャーに革命をもたらします。
“究極の位相同期はダンスそのもののさなかに起きる。数千人の「おなじ心を持つ」若者たちがハウス・カルチャーの部族的儀式をとりおこなう。ダンスは全員をひとつの同期した瞬間にリンクさせる。おなじドラッグ、おなじ生活時間を共有し、おなじ120BPMのサウンド・トラックにあわせて踊る。彼らは完全に同期している。新しい現実が自発的に出現するのはこうした瞬間だ。
ダグラス・ラシュコフ著「サイベリア」
レイヴ、そしてMDMAはイビザから英国に渡りセカンド・サマー・オブ・ラブを産み出し、現在のEDMムーブメントへと繋がります。EDMの影にもやはりMDMAの存在は否定しがたいものがあるようで2012年マドンナの「モリー(MDMA)にあったことある?」発言も、クレバーな彼女のことだけに当然確信犯だと思わざるをえません。
「レイヴ・カルチャーの歴史」
1967年〜
ヘイトアシュベリーよりサマー・オブ・ラブ発生。LSD蔓延。
イギリスへ輸入されたサイケデリック・カルチャーはUFOクラブやピンク・フロイドへと継承される。
1970年〜
挫折した多くのヒッピーたちが米国西海岸を中心に政治運動から内面世界へシフト。ニューエイジ運動へ発展。
1970年代後半〜
イギリスでジェネシス・P・オーリッジを筆頭とするドラッグ行動主義者たちがインダストリアル・ムーブメントを先導。サマー・オブ・デスへ。
1983年〜
サマー・オブ・デス運動が最高潮に
後のレイヴ・シーンに先駆けMDMAも出回る。TOPYやIOTといった秘密結社、ケイオスマジックも盛り上がる。一方クラウス・ノミ死去などAIDS問題が深刻化。
1985年
世界的にMDMAが非合法化(日本は1990年)
1987年
ニューエイジ運動が再先鋭化。ホゼ・アグエイアスが提唱したハーモニック・コンバージェンス運動が世界規模で発生→ニューエイジ運動の大衆化へ。
ジェネシス・P・オーリッジがシカゴ・ツアー中にアシッド・ハウスと遭遇。イギリス帰国後、UK初のアシッド・ハウス作品”Tune In Turn On The Acid House”発表。コンピュータによるサイケデリック・ルネッサンスとしての「ハイパーデリック」宣言をブチあげる。
各国のヒッピー聖地ゴア、コ・パンガン、イビザなどで同時多発的にMDMAが流通。アシッド・パーティーがレイヴへと変化。ダンス・カルチャーの歴史的革命。
イビザ経由でイギリスにレイヴとMDMAが輸入される。マンチェスターなど郊外よりセカンド・サマーオブ・ラブが発生。社会現象に。
1994年
イギリスにて反レイヴ法「クリミナル・ジャスティス・アクト」可決。
レイヴの大型商業化(合法)と秘境化(非合法)の二極化へ。
1990年代中盤〜後半
東京が世界トップレベルのMDMA大国に。世界各国から有名DJが集合。Key-energyや
マニアック・ラヴなど・・・・・
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