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日本ニューエイジ史〜”ラヴレス”精神世界からスピリチュアルへ

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    日本ニューエイジ史〜”ラヴレス”精神世界からスピリチュアルへ

     

    1960年代のサイケデリック革命の残党と霊性進化論が結びつき1970年代以降花開いた欧米のニューエイジ運動は、ここ日本にも70年代後半「精神世界」(注1)という呼び名で輸入され、独自の屈折性を帯びながら世間へと広まっていった。

     

    当時日本の時代背景に目を向けると、先ずは敗戦後の高度経済成長にかげりが見られるようになり、公害問題の表面化、73年オイルショック、連合赤軍事件、東西冷戦の緊張感の高まり・・・・・など、集合意識としての終末観が漂うようになり、人々はこれまでの経済的豊かさから精神的な「何か」を求めはじめるようになる。

     

    そしてオイルショックの起きた1973年には日本で爆発的なオカルト・ブームが発生する。ざっと例を挙げると・・・・・

     

    「ウィリアム・フリードキン監督の"エクソシスト"公開(日本公開は74年)」
    「コリン・ウィルソン著"オカルト"新潮社より出版、日本だけで20万部の大ヒットに」
    「五島勉"ノストラダムスの大予言"出版」
    「小松左京"日本沈没"出版」
    「ユリ・ゲラー来日」
    「日本テレビ"木曜スペシャル"スタート、後にユリ・ゲラーやネッシー、オリバー君、UFOブームを続々連発」
    「日本テレビ"お昼のワイドショー"番組内で"怪奇特集!!あなたの知らない世界"がスタート」

     

    これら情報が日々メディアを賑わし、人々のお茶の間マインドをオカルトが侵食していった。

     

    さらに当時日本の時代背景として特筆すべきなのが新々宗教ブームの到来だろう。これは70年代以降台頭してきた新興宗教のブームで、阿含宗や統一教会、幸福の科学、GLA、崇教真光などが挙げられる。特徴としては信者獲得のターゲット層が都市部の核家族第二世代であり、これまでの家族関係や人間関係への違和感を巧みについた勧誘が特徴。組織によっては過激な出家主義もあいまって社会問題にも発展していった。

     

    これら時代性を背景にニューエイジ運動は「精神世界」として日本に紹介されるわけだが、実際に世間で精神世界という用語が用いられたのが1977年の紀伊国屋書店だという。これには「平河出版”ザ・メディテーション”創刊販促にともない、精神世界コーナーが設立された」説と「たま出版創業者である瓜谷侑広阿含宗本の販促のためにコーナー設立させた」説があるが真相は不明だ。

     

    ともあれ紀伊国屋書店を皮切りに1970年代後半から全国各所の大型書店で精神世界がコーナー展開されるようになったのは間違いなさそうである。コーナーには瞑想やヨガ、神秘体験、チャネリングからニューサイエンス、心理学、密教、はたまたUFOから心霊体験まで・・・・・まさにオカルトと新々宗教を経緯した日本ならではのニューエイジ(=精神世界)を展界。

     

    1979年にはオカルト雑誌”ムー”(注2)が創刊。このヒットに便乗するかのごとく以降”トワイライトゾーン””マヤ”といったオカルト系雑誌が続々創刊されるなど、そのケイオスな精神世界の勢いは加速したまま1980年代へと突入し、バブル経済の波に乗っていった。

     

    しかし欧米のニューエイジ運動が1960年代サイケデリック革命と宗教的思想背景を持った霊性運動=スピリチュアリティを土台にしていたことに対し、日本の精神世界運動はサマー・オブ・ラヴ不在なラヴレス状態のままであった。サマー・オブ・ラヴの不在はすなわちカウンター・カルチャーの不在にも繋がり、精神世界運動はあくまでも社会的保守の立場を保ったまま精神的「何か」を求めた。そのため運動の多くが資本主義システムにやすやすと回収されることとなる。

     

    資本主義システム化された精神世界の顕著な例が自己啓発セミナーだろう。1960年代エサレン研究所などでも取り入れられていたグループ・セラピーであるセンシティビティ・トレーニング(感受性訓練ST)は精神世界ブーム以前より企業を中心に早々と日本へと輸入され、企業の人材開発メソッドとして乱用される。そこではマズローのヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントなどを模範としながらも、オリジナルが重要視した神秘主義要素を「商品化するにはわかりにくい」理由からまるごと排除。「会社との一体感」こそが至高体験なのだと位置づけられスパルタ社員研修化する。そのしごきにより精神疾患者、自殺者まで出すなど日本流STは社会問題に発展、その影響を受けて1970年代中ごろには下火化する。

     

    この企業向けSTに変わって、個人向けの意識改革として台頭してきたのが1974年ライフ・ダイナミック社を皮切りとする自己啓発セミナー・ブームである。「自己責任」「人生は選択である」「あなたがあなたの現実をつくる」を意識の三本柱とした日本流自己啓発スタイルはST時代のしごき体質こそソフト化されたものの絶対的な社会システム」を前提とし、そのシステムに自らを最適化させようとする隷属思想は日本流STと何ら変わるところはなかったといえるだろう。

     

    またサマー・オブ・ラヴ不在のゆがみとして挙げられるのがオウム真理教の存在だ。オウム真理教が唱えた脱物資世界論やヨガ、瞑想、チベット密教、そして90年代初頭にかけて噂となったサティアンでの大量LSD製造と密売(注3)・・・・・などを列挙すれば正統派(?)サマー・オブ・ラヴ(時代的にはポスト・セカンド・サマー・オブ・ラヴか)継承団体といいたくもなるが、カウンターではあっても(注4)カルチャー面での貧しさ、圧倒的な美意識の欠如は致命的だった。

     

    そして1995年、オウム真理教は一連の事件を起こし組織壊滅する。事件の影響は甚大であり、また折りからの日本バブル崩壊の影響もあって精神世界ブームもこの時期を境に衰退してしまう

     

    しかし2000年代に突入すると江原啓之によるスピリチュアル・ブームが誕生。それまでの「霊能力」的なオカルト・イメージを払しょくしたカジュアルなカウンセリング・スタイルが人気を呼ぶ。またテレビ番組“オーラの泉”の大ヒットも影響し、スピリチュアルという言葉はお茶の間レベルにまで浸透。2000年代初頭にはスピリチュアル・コンベンション(注5)に代表されるイベントも活性化し、スピリチュアル・ブームは最盛期を迎えた。

     

    その後最盛期の勢いこそ失うものの、スピリチュアルは市民権を獲得したままカルチャーの一端を担い続けながら現在に至っている。しかしそこで人々が求めるものは「意識の変容」よりむしろ「癒し」であり、スピリチュアルは現在までカウンターとしての力は放棄したままビジネスの一貫として消費システムのなかにとどまり続けている。またスピリチュアルの一部から「絶対的なものへの帰属」を求め国粋的な日本主義へと傾倒していく流れも無視できないものがある。

     

    (注1)「精神世界」

    そもそも精神世界という呼び名は宗教学者の島園進が「ニューエイジという呼び名を学術用語として用いるのは不適切である」という理由で考案されたもの。そしてその際に精神世界とは別に候補にあがった呼び名が新霊性運動だったという。もし精神世界ではなく、ニューエイジ、もしくは新霊性運動という呼び名だったとしたら、また違った展開があったのかもしれない。

    (注2)ムー

    「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」をキャッチコピーに学研プラスが発行するオカルト月刊誌。八幡書店の武田崇元が顧問を務める。

    (注3サティアンでの大量LSD製造と密売

    OLストリート”なる俗称で1990年代初頭地下マーケットに出回っていて、品質はバツグンだったという噂がある。世界のLSD史においてもその生産量は突出していて、オウム末期にはサティアンから大量のLSDが盗み出されフリーパーティーで振舞われたとの都市伝説も存在する。真実か否かは確認できないが、1990年代のアンダーグラウンド・クラヴシーンにおいて相当の影響はあったのではないかと推測される。

    (注4カウンターではあっても

    そもそも事件の闇が深すぎて、様々な陰謀論的憶測が現存するオウム真理教なのでカウンターかどうかも怪しかったりはする。

    (注5)スピリチュアル・コンベンション

    通称「すぴこん」。2002年より開始されたスピリチュアルと癒しの大見本市。会場ではカウンセラーからボディワーク、占い、物販など様々なブースが並び、最盛期には年間11万人以上の動員も記録された。現在はスピリチュアル・マーケット、通称「スピマ」という呼び方が定着している。

     

     


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      • 2018.08.16 Thursday
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